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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

それは留守の台所を預った娘の計らいなのか、それとも野村の采配だったのか、それは分らぬ。ただ閑子の胸にきたのは、けちんぼがきらいだと聞かされて、安心して三日にあげず百目の肉を買っていた野放図さだったのだ。百目の牛肉は普通の場合の主婦ががま口の中を考えずには買えるものではないすさまじい日常ではあるが、野村の経済はそういうサラリーマンや小市民とは異ったものがある筈だった。しかし現実の野村はそれをどのように考えていたろうか。閑子が経済のくり回しは非常に上手だと貞子に語ったこともある野村、上手だというのは倹約の意味なのだろうか。そうなら五十目の肉はどういう意味だったのか。そして今日、この牛肉の山はそんなこととは何の関係もないことだろうか。野村は閑子との結びつきに先だって、けちんぼはいやだといった。けちんぼということをミネは倹約と並べて考えていた。野村もミネもその育ちは貧しい労働者の子供である。働かねば食えぬ苦労を重ねて今日も尚働き続けている互いの生活は派手でなどあろう筈はない。けちんぼはいやだとダメを押されても閑子はびくびくしていたかもしれない。それがどのようにひびいていたか。