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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
かつて、ある時代の激しい風雨をそれぞれの姿でくぐってきた三人である。四人といえぬところに妻に死なれた野村の大きな不幸があり、その不幸を埋めるような回り合せで、ミネの妹の閑子は、つい最近野村と結婚したのであった。野村の元の妻は終戦の少し前、永い病気のあとなくなったのであったが、葬式に集ることさえできないほど空襲のはげしい時のことで、知らせのはがきをうけとった時はもう半月もたっていた。庭に咲いたひめ日まわりの花をもって、防空服装でミネたちは野村の家を訪れた。仏をまつる花さえも不自由な時で、床の間の小机にのせられた白い包みを飾る花も申しわけのように淋しく、その前にしょんぼり坐って伏目がちの野村の姿も哀れを催させた。帰る途々、ミネは悠吉にいった。
「野村さんて、ひどく、へたへたね。」
野村が危篤の妻の枕辺で手をとり合って泣いていたという噂などを聞いていたミネは、今いよいよ妻に死なれて、まともな声も出せないほどしおれている野村の姿を見て、驚いたのである。それを夫婦の情愛とみるにはあまりにも異様に感じられるほど、がっかりした様子だった。何故そんなにもがっかりしているのか十分理解出来ないほど、それまでの野村との交際は薄かったともいえる。