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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

ミネはうつむいて家にかえった。部屋に入ると、悠吉が待ち構えていた。

「どうした。」

「どうもこうもないわよ。」

つんけんと答える。そして当の仇が悠吉であるかのように、ミネはその前にでんと坐って、

「ずるいわ野村さん、私にだけ因果をふくませようとしてる。閑子は日記をみたきりで、野村さんの口からは何も聞いていないのよ。」

いいながらふとミネは、今日の自分の態度が、閑子を却って野村へ近づけたのではないかと思った。一しょになって、くそみそにやっつけるべきだったのだろうか。しかしどうであろうと結果はもう見えすいていた。そしてその翌日である。野村はそそくさとやってきた。何かに恐怖しているような落ちつかなさで、ミネや悠吉の前に手をつきかんべんしてくれと頭を下げ、それで押し切ろうとする態度だった。それは殿様に土下座する賤民のようにまで卑屈に見えたが、その芯にはもう決して動かされないねばっこさをさとらせた。たった二日閑子が家を開けたことで、ミネに手紙で知恵を求めた必要もなくなり、野村の決意はますます固まったのだろう。必要以上に何度も頭を下げながら彼は、閑子を引きとりにきてくれという。