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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
今では永年の裁縫教師をやめて、ミネの実家に独り暮しの淋しさを続けているのだったが、その閑子を、ミネは急に野村の手紙と結びつけて考えた。裁縫の出来るやさしい女、裁縫の出来るやさしい女。ああ実に彼女こそは裁縫の出来るやさしい女ではないか。ミネは四十の閑子がこれまで独りでいたことが、まるで野村のために待ってでもいたかのような気がしてき、閑子のことを誰かに聞いて野村はこの手紙をよこしたのではあるまいかとまで考えたりした。しかし野村との浅い交際の中で、野村が閑子の存在を知っている筈はなかった。ただ閑子の方は、書かれたものを通して野村を知っていた。ミネが野村の手紙を見せると、
「私なんか、とても。」
赤い顔をしてひどくあとじさりをした。だが二度三度話すうちにそれではミネに任せようといった。
「でもね、私がこういっても、これはまだ一方的な話だけで、向うで何というか分らないのだから、ダメだったらかんべんしてね。」
「もちろんよ、そんなこと。ただ私もこの頃いろいろ考えるようになったのよ。一生独りで暮すつもりでいたんだけれど、この年になるとあとあとが思いやられて、やっぱり適当な相手さえあればと思うようになってね、戦争中に、もう一人でいることにうんざりしたの。