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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
そこにミネがいることもしらぬように、閑子は縁側から上っていった。そして人との交渉の一ばん少い三畳へ入って行って、ぴしゃりと障子をしめた。だめだったのだ。あとからミネも入っていった。閑子は壁に向って坐っている。ふりむきもしない。
「閑ちゃん。」
呼びかけると閑子はかすかに首をふった。並んで坐って肩に手をやると、つぶやくような小声で、
「わたしの坐れるすきまを、誰も見せてくれなんだ。おそろしい、うちだったわ。」
やはり壁をみつめたままでいった。ミネは涙がたらたらとこぼれた。しかし閑子は泣いていない。
「どうしてどうして、やっぱり他人だった。」
こうして閑子は本当に戻ってきたのである。早耳の新聞社は早そくやってきて、野村とミネにそれぞれの立場からのいい分を書かせようとした。ミネは取り合わなかった。ミネの親しくしている婦人記者はぜひともミネに女の立場からの抗議をかかせ雑誌にのせたいといった。こんな場合女はいつも損な立場におかれるのが通常だが新しい態勢の中で男女はどんな要求をし、進歩的といわれている作家の野村はどんな慰謝方法で解決したのか模範的にそれを示して欲しいというのだ。