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しぎょうしきにのぞみて
始業式に臨みて
大隈 重信
「早稻田學報 第三百十五號」早稻田大學校友會、1921(大正10)年5月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,748 字 · 14 页
抑々日本人は弱いのであるかというとそうではない。これはみずから怠って弱くなるのである。気象が乏しい、競争心が少ない。世人はある意味からして、かくの如き人を善良なる人という。善良なる人というと大いに宜しいようでもあるが、実はその人々は競争心を失っているのである。かくの如き善良人ならば、それは国家に有害なものである。ところが競争心が強いと時々競争が極点に達して、心得違いにも喧嘩をしたり殴り合いをする。これは褒めたことではないが、しかしながらそれぐらいの気象がなければならぬ。国際間の道徳の如きはなお甚だ幼稚である。向うから喧嘩を吹掛けて来れば止むを得ずこれに応じなければならぬ。ところがどうかするといわゆる善良なる人は更に抵抗しない。抵抗力を貯えておって、そうして抵抗しないと言うならばとにかくであるが、実はそれは嘘であって、抵抗力がなくなっているからしてそんなことを言うのだ。宗教家などにはそういう嘘を吐く人が往々ある。これは空念仏といって我輩の取らざるところのものである。
何としても競争は必要だ。敵が圧迫して来れば何時でも相手になる。こっちから喧嘩を吹掛けるのは宜しくないが、吹掛けて来れば相手になる。