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こんきはずれ
婚期はずれ
織田 作之助
「会館芸術」1940(昭和15)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,054 字 · 16 页
そのことが僅かにおたかの心を慰めた。
おたかは娘たちがそろって銭湯に行くのも憚る気持がした。娘たちは銭湯の裏口からこそこそと行き、裏口から帰った。朝日理髪店の勝手口は細い路地をへだてて銭湯の裏口に向いあい、つまりはどちらも路地の入口にあったのだ。それで銭湯へしのんで行くには便利だったが、勝手口が路地の中にあるゆえ、まるで跡地裏長屋に住んでいるようにも見え、仲人が来るたびにおたかがそわついたのも、一つにはこのためだった。
路地の奥はちょっとした空地で、夏などわりに風通しが良いとて、娘たちは晩になると洗濯物の乾してある下へ床几を持ち出して、ずらりと腰を掛けて並んだ。見て、おたかは何かぞおっとした。長屋の人たちが集まってのいわば夕涼み話には、娘たちは余り立ちいらず、団扇を膝の上で弄びながらぼんやりときいているのだが、それがつつましいというより、むしろがしんたれ(不甲斐性者)に見えた。それもみな未だかたづいていないためだと、おたかはいよいよ焦った。
路地に年中洋服を着た若い男が母親と移って来て、花井といい、株屋の外交員をしているとのことだった。小柄で浅黒くてかてか光った皮膚をして、顔はとがった形にこぢんまり整い、長屋住いには惜しい男だと、おたかは眼をきょろきょろさせたが、もうその日から煮たき物を花井の家へ持って