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こんきはずれ

婚期はずれ

織田 作之助

「会館芸術」1940(昭和15)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,054 字 · 16 页

青空文庫

行った。毎日それが続いて、たとえばおからの煮ものを持って行くにしても、それには沢山海老がはいっていると、近所のひとびとは喧しく取沙汰した。おまけにおたかは永助に、花井さんが散髪に来やはったかて、銭もオたらあかんぜと駄目押すなど、何くれと花井の機嫌をとり、ひとびとの眼にも随分と目立った。

そういうことが半年も続くと、もはやおたかの肚はひとびとにも読みとれ、いまは、誰を貰てもらうつもりやろと、それが問題だった。けれどもおたかにしてみれば、誰をかたづけるなどとはっきり決めることは何かおそろしく、強いていえば、どちらも小柄だという点で義枝をとひそかに希ってはいたものの、さすがにそれとはいい出せなかった。どころか、第一そんな縁組みとかなんとかいう気持ではないと、ときにはわざと冷たく構えて、あとで後悔するのだった。そういう気持がしかし花井に通ぜぬはずはなく、花井もだんだんにべたべたとおたかと親しくし、しばしば図々しくおたかの家の座敷で寝そべったりした。義枝はびっくりした眼をして、花井にお茶など出していた。

ところが、ある夜、花井母子は夜逃げしてしまい、どうやら主人の金で株をして穴をあけたためだと、あとで分った。