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ふじんとぶんがく

婦人と文学

宮本 百合子

※「作品について」参照

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页

青空文庫

「別離の情は懐旧の情なり」「複雑なる泰西の文化が単純なる固有の思想と相たたかふの跡を見しも、フロオベル、ドオデエ、ゾラ等の奉ずるといふなる実際派の勢力は吾国の小説界にまで著しき傾向を与へんとしつつある様を眺めしも、またあはれなる『ロマンティシズム』の花の種のそこここにちりこぼれたるを見しも、実にこの間にありき。」「まだ百花爛灼たる騒壇に遇はずして先づ住みなれし故郷を辞せんとはすなり。」

藤村のこの告別の文章は、適切に当時の文学の動きうつりつつあった有様を語っている。

同じ『文学界』でも、終りに近い号には花袋の「かくれ沼」などという写生文脈のうかがわれる小説がのせられているし、藤村自身、詩文集『一葉舟』を出し、文学界には「木曾谿日記」をのせ、やがて小諸義塾へ教師としてゆき、次第に写実的な傾向で小説に固まろうとしている時代である。秋骨は、吾が国現在に主義なく、思想の破るべきなし、「やむなくば理想の世界に遊び、はた力行の世界にかへらんかな」と『文学界』の最終号にかいた。

日清戦争の後の日本の社会的な条件の変化は、各人に各様の刺戟となって、一葉の周囲に僅か一二年は渾然と在り得た文学界同人の方向をも分裂させたのであった。