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ふじんのどくしょ

婦人の読書

宮本 百合子

「知性」1940(昭和15)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,784 字 · 8 页

青空文庫

が考えられるのではなかろうか。ちょうど着物を買うときのように、彼女たちは本を買っている。読書も一つの生活の要素ではあるが、あれ面白かった? これどう? いい? という時の感情は、映画なんかについてしゃべるのと大したちがいを持っていないような気分があたり前のようになって来ていると思う。一冊の本の内へはいっていって、その世界と自分の生活とを密接にからみ合わせてみるという気魄のある読みかたが失われているように思える。

現代は一方に一種の精神主義がひろがっていて声高くものをいっているのであるが、その片面にこういう精神活動の低調さや、にぶりが目立つということは、日本の明日への文化のためにやすんじてよいことなのだろうか。

婦人たちがますます本を買って読みながら、自分たちの生きている歴史の意義や女の生活のおくれを自覚してゆく活溌能動の心情を失う方向へばかり導かれているとしたら、購買力として婦人の数の増大することはとりもなおさず、文学なら文学作品の商品化に拍車をかける作用をするばかりのようなことになる。今日、ともかく婦人の間に読書の風がひろまりつつあるとすれば、その習慣はもっとも懇切な努力でさらにより意味のある本の選択や、いくらか系統だった読書への趣向の方向へ育てまもられてゆかなければならないだろう。