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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
」
「貴郎には小児でも、もうお嫁入盛じゃありませんか。どうかすると、こっちへもいらっしゃる、学校出の方にゃ、酒井さんの天女が、何のと云っちゃ、あの、騒いでおいでなさるのがありますわ。」
「あの、嬰児をか、どこの坊やだ。」
「あら、あんなことを云って。こちらの早瀬さんなんかでも、ちょうど似合いの年紀頃じゃありませんか。」
と何でものう云ってのけたが、主税は懐中の三世相とともに胸に支えて俯向いた。
「その癖、当人は嫁入と云や鼠の絵だと思っているよ。」
と云いかけて莞爾として、
「むむ、これは、猫の前で危い話だ。」
と横顔へ煙を吹くと、
「引掻いてよ。」と手を挙げたが、思い出したように座を立って、
「どうしたんだろうねえ、電話は、」と呟いて出ようとする。
「おい、阿婆は?」
「もう寐ました。」
「いや、老人はそう有りたい。」
座の白ける間は措かず、綱次はすぐに引返して、
「姉さんは、もう先方は出たそうですわ。」
云う間程なく、矢を射るような腕車一台、からからと門に着いたと思うと、
「唯今!」と車夫の声。
三十八
「そうかい。」
と……意味のある優しい声を、ちょいと誰かに懸けながら、一枚の襖音なく、すらりと開いて入ったのは、座敷帰りの小芳である。