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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
」
「むざむざ新らしいのを。」
と主税は袖を引張る。
「いいえ、私、今着て見たの、お初ではありません。御遠慮なく、でも、お気味が悪くはなくって。ちょいと着たから、」
「気味が悪い、」
「…………」
「もんですか。勿体至極もござらん。」
と極ったが、何かまだ物足りない。
「帯ですか。」
「さよう、」
「これを上げましょう。」
とすっと立って、上緊をずるりと手繰った、麻の葉絞の絹縮。
「…………」
目を見合せ、
「可いわ、」
とはたと畳に落して、
「私も一風呂入って来ましょう。今の内に。」
主税はあとで座敷を出て、縁側を、十畳の客室の前から、玄関の横手あたりまで、行ったり来たり、やや跫音のするまで歩行いた。
婢が来て、ぬいと立って、
「夫人が言いましけえ、お涼みなさりますなら雨戸を開けるでござります。」
「いや、宜しい。」
「はいい。」と念入りに返事する。
「いつも何時頃にお休みだい。」
と親しげに問いかけながら、口不重宝な返事は待たずに、長火鉢の傍へ、つかつかと帰って、紙入の中をざっくりと掴んだ。
疾い事、もう紙に両個。
「一個は乳母さんに、お前さんから、夫人に云わんのだよ。」
十七