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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

怪い扱帯の我を纏えるに心着いたか、あ、と忍び音に、魘された、目の美しい蝶の顔は、俯向けに菫の中へ落ちた。

思いやり

二十

妙子は同伴も無しにただ一人、学校がえりの態で、八丁堀のとある路地へ入って来た。

通うその学校は、麹町辺であるが、どこをどう廻ったのか、真砂町の嬢さんがこの辺へ来るのは、旅行をするようなもので、野山を越えてはるばると……近所で温習っている三味線も、旅の衣はすずかけの、旅の衣はすずかけの。

目で聞くごとくぱっちりと、その黒目勝なのをったお妙は、鶯の声を見る時と同一な可愛い顔で、路地に立ってわしながら、橘に井げたの紋、堀の内講中のお札を並べた、上原と姓だけの門札を視めて、単衣の襟をちょいと合わせて、すっとその格子戸へ寄って、横に立って、洋傘を支いたが、声を懸けようとしたらしく、斜めに覗き込んだ顔を赤らめて、黙って俯向いて俯目になった。口許より睫毛が長く、日にさした影は小さく軒下に隠れた。

コトコトとその洋傘で、爪先の土を叩いていたが、

「御免なさい。」

とようよう云う、控え目だったけれども、朗に清しい、框の障子越にずッと透る。