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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
中からよく似た、やや落着いた静な声で、
「はあ、誰方?」
お妙は自分から調子が低く、今のは聞えない分に極めていたのを、すぐの返事は、ちと不意討という風で、吃驚して顔を上げる。
「誰方、」
「あの……髪結さんの内はこっちでしょうか。」
「はい、こちらでございますが。」と座を立った気勢に連れて、もの云う調子が婀娜になる。
と真正面に内を透かして、格子戸に目を押附ける。
「何ぞ御用。」
といくらか透いていた障子をすらりと開ける。粋で、品の佳い、しっとりした縞お召に、黒繻子の丸帯した御新造風の円髷は、見違えるように質素だけれども、みどりの黒髪たぐいなき、柳橋の小芳であった。
立身で、框から外を見たが、こんな門には最明寺、思いも寄らぬ令嬢風に、急いで支膝になって、
「あいにく出掛けて居りませんが、貴嬢、どちら様でいらっしゃいますか。帰りましたら、直ぐ上りますように申しましょう。」
瞳も離さないで視めたお妙が、後馳せに会釈して、
「そう、でも、あの、誰方かおいででしょう。内へ来て貰うんじゃないの。私が結って欲しいのよ。どうせ、こんなのですから、」
と指でも圧えず、惜気なく束髪の鬢を掉って、