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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

謂うまでもなく草深の妹は先陣承りの飛将軍。そこでこの会のほとんど参謀長とも謂つべき本宅の大切な母親が、あいにく病気で、さしたる事ではないが、推してそういう場所へ出て、気配り心扱いをするのは、甚だ予後のために宜しからず、と医家だけに深く注意した処から、自分で進んだ次第ではなく、道子が出席することになった。――六月下旬の事なりけり。

朝涼の内に支度が出来て、そよそよと風が渡る、袖がひたひたと腕に靡いて、引緊った白の衣紋着。車を彩る青葉の緑、鼈甲の中指に影が透く艶やかな円髷で、誰にも似ない瓜核顔、気高く颯と乗出した処は、きりりとして、しかも優しく、媚かず温柔して、河野一族第一の品。

嗜も気風もこれであるから、院長の夫人よりも、大店向の御新姐らしい。はたそれ途中一土手田畝道へかかって、青田越に富士の山に対した景色は、慈善市へ出掛ける貴女とよりは、浅間の社へ御代参の御守殿という風があった。

車は病院所在地の横田の方から、この田畝を越して、城の裏通りを走ったが、突かけ若竹座へは行くのでなく、やがて西草深へ挽込んで、楫棒は島山の門の、例の石橋の際に着く。

姉夫人は、余り馴れない会場へ一人で行くのが頼りないので、菅子を誘いに来たのであったが、静かな内へ通って見ると、妹は影も見えず、小児達も、乳母も書生も居ないで、長火鉢