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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

蒼空の星を仰ぐがごとく、お妙の顔を見上げながら、

「どうして来たんです。誰と。貴女。いつ。どの汽車で。」と、一呼吸に慌しい。

「今日の正午の汽車で、今来たわ。惣助ッて肴屋さんが一所なの。」

「ええ、め組がお供で。どうしてあれを御存じですね。」

「お蔦さんの事よ、」

と言いかける、口の莟が動いたと思うと、睫毛が濃くなって、ほろりとして、振返ると、まだそこに、看護婦が立っているので、慌てて袂を取って、揉込むように顔を隠すと、美しい眉のはずれから、振が飜って、朱鷺色の絽の長襦袢の袖が落ちる。

「今そんな事を聞いちゃ、厭!」

と突慳貪なように云った。勿、問いそそこに人あるに、涙得堪えず、と言うのである。

看護婦は心得て、

「では、あの、お言託は。」

「ちと後にして頂きましょう。お嬢さん、そして、お伴をしました、め組の奴は?」

「停車場で荷物を取って来るの。半日なら大丈夫だって、氷につけてね、貴下の好なお魚を持って来たのよ。病院なら直き分ります、早くいらっしゃいッて、車をそう云って、あの、私も早く来たかったから、先へ来たわ。皆、そうやって思ってるのに、貴下は酷いわ。手紙も寄越さないんですもの。