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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

五十三

一言亡状を極めたにも係わらず、英臣はかえって物静に聞いた。

「なぜか。」

「馬丁貞造と不埒して、お道さんを産んだからです。」

強いて言を落着けて、

「それから、」

「第二、お道さんを私に下さい。」

「何でじゃ?」

「私と、いい中です。」

「むむ、」

と口の内で言った。

「それから、」

「第三、お菅さんを、島山から引取っておしまいなさい。」

「なぜな。」

「私と約束しました。」

「誰と?」

はたと目を怒らすと、早瀬は澄まして、

「私とさ。」

「うむ、それから?」

「第四、病院をお潰しなさい。」

「なぜかい。」

「医学士が毒を装ります。」

「まだ有った、のう。」と、落着いて尋ねた。

「河野家の家庭は、かくのごとく汚れ果てた。……最早や、忰の嫁を娶るのに、他の大切な娘の、身分系図などを検べるような、不埒な事はいたしますまい。また一門の繁栄を計るために、娘どもを餌にして、婿を釣りますまい。

就中、独逸文学者酒井俊蔵先生の令嬢に対して、身の程も弁えず、無礼を仕りました申訳が無い、とお詫びなさい。

そうすりゃ大概、河野家は支離滅裂、貴下のいわゆる家族主義の滅亡さ。そこで敗軍した大将だ。