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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

本来だと、朋友が先生の令嬢を娶りたいに就いて、下聴に来たものを、聞かせない、と云うも依怙地なり、料簡の狭い話。二才らしくまた何も、娘がくれた花だといって、人に惜むにも当らない。この筆法をもってすれば、情婦から来た文殻が紛込んだというので、紙屑買を追懸けて、慌てて盗賊と怒鳴り兼ねまい。こちの人措いて下さんせ、と洒落にも嗜めてしかるべき者までが、その折から、ちょいと留女の格で早瀬に花を持せたのでも、河野一家に対しては、お蔦さえ、如何の感情を持つかが明かに解る。

それは英吉と、内の人の結婚に対する意見の衝突の次第を、襖の蔭で聴取ったせいもあろう。

そうでなくっても、惚れそうな芸妓はないか。新学士に是非と云って、達引きそうな朋輩はないか、と煩く尋ねるような英吉に、厭なこった、良人が手を支いてものを言う大切なお嬢さんを、とお蔦はただそれだけでさえ引退る。処へ、幾条も幾条も家中の縁の糸は両親で元緊をして、颯さらりと鵜縄に捌いて、娘たちに浮世の波を潜らせて、ここを先途と鮎を呑ませて、ぐッと手許へ引手繰っては、咽喉をギュウの、獲物を占め、一門一家の繁昌を企むような、ソンな勘作の許へお嬢さんを嫁られるもんか。