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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
肥満のお三どんが、ぶっちょう面をしゃあがって、旦那様とか、先生とかお言いなさい、御近所へ聞えます、と吐しただろうじゃねえか。
ええ、そんなに奉られたけりゃ三太夫でも抱えれば可い。口に税を出すくらいなら、憚んながら私あ酒も啖わなけりゃ魚も売らねえ。お源ちゃんの前だけれども。おっとこうした処は、お尻の方だ。」
「そんなに、お邪魔なら退けますよ。」
お源が俎板を直して向直る。と面を合わせて、
「はははははは、今日あ、」
「何かい、それで腹を立って行かないのかい。」
「そこはお前さんに免じて肝の虫を圧えつけた。翌日も廻ったがね、今度は言種がなお気に食わねえ。
今日はもうお菜が出来たから要らないよサ。合点なるめえじゃねえか。私が商う魚だって、品に因っちゃ好嫌えは当然だ。ものを見てよ、その上で欲しくなきゃ止すが可い。喰いたくもねえものを勿体ねえ、お附合いに買うにゃ当りやせん、食もたれのなんぞで、せせり箸をされた日にゃ、第一魚が可哀相だ。
こっちはお前、河岸で一番首を討取る気組みで、佳いものを仕入れてよ、一ツおいしく食わせてやろうと、汗みずくで駈附けるんだ。醜女が情人を探しはしめえし、もう出来たよで断られちゃ、間尺に合うもんじゃねえ。