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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
さあ、お目通りで、着物を引掉って神田児の膚合を見せてやらあ、汝が口説く婦じゃねえから、見たって目の潰れる憂慮はねえ、安心して切立の褌を拝みゃあがれ。
ええこう、念晴しを澄ました上じゃ、汝、どうするか見ろ。」
「やあ、風が変った、風が変った。」
と酒井は快活に云って、原の席に帰った。
車掌台からどやどやと客が引込む、直ぐ後へ――見張員に事情を通じて、事件を引渡したと思われる――車掌が勢なく戻って、がちゃりと提革鞄を一つ揺って、チチンと遣ったが、まだ残惜そうに大路に半身を乗出して人だかりの混々揉むのを、通り過ぎ状に見て進む。
と錦帯橋の月の景色を、長谷川が大道具で見せたように、ずらりと繋って停留していた幾つとない電車は、大通りを廻り舞台。事の起った車内では、風説とりどり。
あれは掏摸の術でございます。はじめに恐入っていた様子じゃ、確に業をしたに違いませんが、もう電車を下りますまでには同類の袂へすっこかしにして、証拠が無いから逆捻じを遣るでございます、と小商人風の一分別ありそうなのがその同伴らしい前垂掛に云うと、こちらでは法然天窓の隠居様が、七度捜して人を疑えじゃ、滅多な事は謂われんもので、のう。