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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

そうおっしゃれば、あの掏られた、と言いなさる洋服を着た方も、おかしな御仁でござりますよ。此娘の貴下、(と隣に腰かけた、孫らしい、豊肌した娘の膝を叩いて、)簪へ、貴下、立っていてちょいちょい手をお触りなさるでございます。御仁体が、御仁体なり、この娘が恥かしがって、お止しよ、お止しよ、と申しますから、何をなさる、と口まで出ましたのを堪えていたのでござりますよ。お止しよ、お祖母さんと、その娘はまた同じことをここで云って、ぼうと紅くなる。

法然天窓は苦笑いをして……後からせせるやら、前からは毛の生えた、大な足を突出すやら……など、浄瑠璃にもあって、のう、昔、この登り下りの乗合船では女子衆が怪しからず迷惑をしたものじゃが、電車の中でも遣りますか、のう、結句、掏摸よりは困りものじゃて。

駄目でさ、だってお前さん、いきなり引摺り下ろしてしまったんだから、それ、ばらばら一緒に大勢が飛出しましたね、よしんばですね、同類が居た処で、疾の前、どこかへ、すっ飛んでいるんですから手係りはありやしません。そうでなくって、一人も乗客が散らずに居りゃ、私達だって関合いは抜けませんや。