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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

「あなた、そんなことを仰有っていたんじゃ仕方ありませんわ」

と夫人が注意した。

「商大だからいけないと言うんじゃない。帝大と違うと言ったのさ」

「違っても官立なら宜しいじゃございませんか?」

「無論悪いとは言っていない。衣笠さん、承わりましょう」

「商大を可なりの成績で出て、当年二十八歳、自家営業です」

「そこまでは妻から聞きましたが、何ういう商売ですか?」

「京鉄瓶の製造元です」

「鉄瓶屋ですか?」

「はあ、ナカ/\大きくやっている家で、一流だそうです」

「常子や、何うだろうね? 鉄瓶屋とは思いがけなかった」

と山下さんは夫人を顧みた。

「堅い御商売でございますわね」

「鉄物だから堅いには相違ないが、何だか働きがないようだね」

「いゝえ、京鉄瓶は好いんでございますよ」

と夫人は執成さざるを得ない。

「南部が何と言っても、京都には敵いません。値段も倍から違います。鉄気の出ないこと請合です」

と衣笠さんも順序として京鉄瓶の推薦をした。

「会社組織ですか?」

「いや、昔風の手堅い商家だそうです。大番頭が妻の身寄のものですから、家の様子は能く分っている積ですし、尚お幾らでも問い合せます」