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よめとりむことり

嫁取婿取

佐々木 邦

「婦人倶楽部」1929(昭和4)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,654 字 · 175 页

青空文庫

しかし三郎君は、

「今日伺いましたのは余の儀でもございません」

と更に改まった。これが名人だから仕方がない。

「何だね?」

「御縁談を持って上りました」

「はゝあ。誰のだい?」

「安子さんのです」

「これは有難い。常子や」

「それは/\」

とお母さんは予定の行動だった。

「帝大出身の経済学士です」

「何処へ勤めている?」

「自家営業です」

「はゝあ。何屋だね?」

「眼鏡屋です」

「眼鏡?」

「はあ」

「眼鏡は売れまい」

と山下さんは早速第一弾を発した。しかし三郎君は悉皆研究して来ていた。

「売れます。お父さんは現にかけていられます」

「俺は若い時からだが、世間に然う/\近眼はないよ」

「いや、随分あります。独逸の大学生は八十パーセントまで近眼です」

「独逸は独逸、日本は日本さ」

「日本の大学生は六十パーセントです」

「統計を調べて来たのかい?」

「はあ」

「しかし世間一般を見給え。眼鏡をかけている人よりもかけていない人の方が多い」

「違います。それは近眼鏡の場合です。老眼鏡に至りましては四十を越せば一人残らずかけます。お父さんも近眼鏡と老眼鏡を両方お使いでしょう?」

「それは然うさ」

「お母さんは如何ですか?」