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こをつれて

子をつれて

葛西 善蔵

「早稲田文学」1918(大正7)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,970 字 · 34 页

青空文庫

……此奴は口では斯んなことを云ってるが腹の中は斯うだな、ということが、この精神統一の状態で観ると、直ぐ看破出来るんだからね、そりゃ恐ろしいもんだよ。で、僕もこれまでいろ/\な犯人を掴まえたがね、それが大抵昼間だったよ。……此奴怪しいな、斯う思った刹那にひとりでに精神統一に入るんだね。そこで、……オイコラオイコラで引張って来るんだがね、それがもうほとんど百発百中だった」

「……フム、そうかな。でそんな場合、直ぐ往来で縄をかけるという訳かね?」

「……なあんで、縄なぞかけやせんさ。そりゃもう鉄の鎖で縛ったよりも確かなもんじゃ。……貴様は遁れることならんぞ! 貴様は俺について来るんだぞ! と云うことをちゃんと暗示して了うんだからね、つまり相手の精神に縄を打ってあるんだからな、これ程確かなことはない」

「フム、そんなものかねえ」

彼は感心したように首肯いて警部の話を聞いていたが、だん/\と、この男がやはり、自分のことをもその鉄の鎖で縛った気で居るのではないか知らという気がされて来て、彼は言いようのない厭悪と不安な気持になって起ちあがろうとしたが、また腰をおろして、