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こをつれて

子をつれて

葛西 善蔵

「早稲田文学」1918(大正7)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,970 字 · 34 页

青空文庫

「よし/\、……エビフライ二――」

彼は給仕女の方に向いて、斯う機械的に叫んだ。

「お父さん、僕エダマメを喰べようかな」

しばらくすると、長男はまた云った。

「よし/\、エダマメ二――それからお銚子……」

彼はやはり同じ調子で叫んだ。

やがて食い足った子供等は外へ出て、鬼ごっこをし始めた。長女は時々扉のガラスに顔をつけて父の様子を視に来た。そして彼の飲んでるのを見て安心して、また笑いながら兄と遊んでいた。

厭らしく化粧した踊り子がカチ/\と拍子木を鼓いて、その後から十六七位の女がガチャ/\三味線を鳴らし唄をうたいながら入って来た。一人の酔払いが金を遣った。手を振り腰を振りして、尖がった狐のような顔を白く塗り立てたその踊り子は、時々変な斜視のような眼附きを見せて、扉と飲台との狭い間で踊った。

幾本目かの銚子を空にして、尚頻りに盃を動かしていた彼は、時々無感興な眼附きを、踊り子の方へと向けていたが、「そうだ! 俺には全く、悉くが無感興、無感激の状態なんだな……」斯う自分に呟いた。

幾年か前、彼がまだ独りでいて、斯うした場所を飲み廻りほつき歩いていた時分の生活とても、それは決して今の生活と較べて自由とか幸福とか云う程のものではなかったけれど、併しその時分口にしていた悲痛とか悲惨とか云う言葉――それ等は要するに感興