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こどもはかなしみをしらず

子供は悲しみを知らず

小川 未明

「社会 創刊号」1946(昭和21)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,134 字 · 7 页

青空文庫

の力を借りねばできぬ事業でして。」と、おしょうさんはいいました。

「おおぜいの子供の世話では、おたいていでありますまい。」

「いまのところ、まだ五、六人ですが、なにしろこんな時勢で、それさえ荷が重すぎ、ときどき途方にくれますよ。しかし、またいじらしい子供の姿を見ると、これを見捨てられるものかとむち打たれるのです。」

この話をきくうち、地主の目に、一つの光景が浮かびました。過日この孤児園の孤児たちが、連れ立って、書簡せんや、鉛筆や、はみがき粉などをかんへ入れて、売りにきたとき、自分は、つれなく、「みんなあるから、いらない。」と、断ったのだった。そのとき、子供らは恨めしそうに、こちらを見たが、いずれも顔色は青く、手足がやせて、草履を引きずって歩くのも物憂そうなようすであった。

おしょうさんは、前の茶わんをとり上げて、残った茶をすすりながら、

「子供には罪がありません。みんな大人の犯した悪の酬いです。どうか、世間にそのことがわかってもらいたいのです。さすがに、子供どうしの間では同情があって、行商に出ると、鉛筆や、紙などを学校の生徒が買ってくれます。ありがたいことです。