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がくせいじだい

学生時代

幸田 露伴

「中學文藝」1906(明治39)年6月臨時増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,596 字 · 5 页

青空文庫

任命を受けて左様いう事を仕て居るというのでも無いのですが、長らく先生の教を受けて居る中に自然と左様いう地位に立たなければならぬように、自然と出来上がった世話役なので、塾は即ち先生と右の好意的世話役の上足弟子とで維持されて居る訳なのです。

左様いう塾に就いて教を乞うのは、誰か紹介者が有ればそれで宜しいので、其の頃でも英学や数学の方の私塾はやや営業的で、規則書が有り、月謝束修の制度も整然と立って居たのですが、漢学の方などはまだ古風なもので、塾規が無いのではありませんが至って漠然たるものでして、月謝やなんぞ一切の事は規則的法律的営業的で無く、道徳的人情的義理的で済んで居た方が多いのです。ですから私の就学した塾なども矢張り其の古風の塾で、特に先生は別に収入の途が有って立派に生活して行かるる仁であったものですから、猶更寛大極まったものでした。紹介者に連れて行って貰って、些少の束修――金員でも品物でもを献納して、そして叩頭して御願い申せば、直ちに其の日から生徒になれた訳で、例の世話焼をして呉れる先輩が宿所姓名を登門簿へ記入する、それで入学は済んだ訳なのです。