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うちゅうせんぺい
宇宙尖兵
海野 十三
「新青年」1943(昭和18)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,974 字 · 72 页
「こんな静かな密閉された中に生活していたのでは、宇宙を飛んでいるのか、それとも地下の一室で暮しているのか、はっきりしない。せめて展望台に立って、大きな月でも見たら、宇宙を飛んでいるのだと分るだろう」
「艇長は艇内に出来るだけ狂気の類をつくりたくないというので、出発以来、一般の展望を禁止しているのですわ。地球上の奇観とちがって、宇宙の風景はあまりに悽愴で、見つけない者が見ると、一目見ただけで発狂する虞れがあるのですわ。ですから、ここでよくお考えになって、さっきの申出を撤回せられてもあたしは構いませんわ」
「いや、展望をぜひ申入れます。発狂などするものですか。自分で責任をとります」
「あたくしも」
ミミもやっぱり同じ考えであることを明らかにした。これに刺戟されたのか、記者倶楽部の部員六名中、ベラン氏の外はみんな艇外展望を希望した。ベラン氏は非常に不機嫌で、部屋の隅に頭を抱え込んで、誰が声をかけても返事一つしなかった。あわれにも、氏は神経衰弱症になったのであろう。
ところがベラン夫人ミミは、それをいたわるでもなく、平気な顔をしている。夫人も記者だそうで、仕事の上ではベラン氏とは別な一つの立場を持っているせいであるかもしれない。