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あんごのしんにほんちり

安吾の新日本地理

坂口 安吾

07 飛騨・高山の抹殺――中部の巻――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,650 字 · 54 页

青空文庫

隣国で皇位相続の大戦争があって一度も名がでてこないのですよ。

ようやく持統天皇の朱鳥元年になって名が現れた。それはどんなことでかというと、天武帝が死ぬと大津皇子がムホンをたくらんで死刑になった。その一味の曲者であるというので、行心という新羅の坊主がヒダへ流されたのです。大津皇子は殺されましたが、その味方した曲者は二人残して全部ゆるされた。その二人の一人が行心で他の一人がトキの道ツクリ。これは伊豆へ流されています。

こんなバカバカしい裁判があるでしょうか。これは苦心サンタンの計略だろうと私は思う。天武帝が必死の如くにヒダの神を祭っておがんでいるので分りますが、ヒダのタタリやその反撃が何より怖しい大和朝廷だったのでしょう。そこで、天武の死を機会に、自分の最愛の皇子の一人をヒダの皇子か天皇かの運命と同じものにさせた。ムホンを起したことにさせたのです。そして、殺してしまった。しかし全然ムホンは実在しないから、無実の一味の者を本当に殺すわけにゆかない。新しいタタリも怖しかったでしょう。それでも、悲しい辞世をのこして泣く泣く死んだ皇子をジッと見送ったのは、ヒダに対してよほどのことがあるからだ。