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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
02 第一回 高千穂に冬雨ふれり≪宮崎県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,371 字 · 34 页
それでカッポも一口しか味わうことができなかったが、観光客は国見の丘という風景のよいところでカッポ酒をのんで刈干切り唄という土地の唄を実演入りで聞くことになっているらしい。カヤを切りながら土地の農民が唄うもので椎葉のヒエツキ唄にやや似ているが、非常に唄い方がむずかしくて、バスガールもこれを唄うのが非常に困難な様子であった。
カッポ酒がいかに観光客にうけているかということは、この国見の丘という神話の地に大そう近代的な公衆便所ができていることで察せられたのである。その日の私は下痢で苦悶していたから便所が必需品なのだ。その公衆便所は高千穂町全体のうちでどの建物よりも近代建築といってよいぐらい。私はそこに便所の設備を見出して大そう感謝もし便利もしたが、四方の山また山の風景とあまりくいちがったものでもある。グラビヤの最初の写真はこの国見の丘から見おろした高千穂の長崎という部落の風景であるが、四方にこれに類似の山また山、そして屋根に千木をのせた小さな部落風景を見はるかす地に洋風の共同便所がチョコンと建っているのである。天孫降臨の説話を自分の土地にとりいれてしまったノンキな連中が、カッポ酒で商法をはじめるについて、国見の丘ともあろう山上にデンとコンクリの便所を構えた勇気の程と神をも怖れぬサービスぶりは痛快ではないか。