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あんじゅうこん

安重根

谷 譲次

――十四の場面――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页

青空文庫

飲みつづける。青年一をはじめ、二三人集まって、甕を廻して飲む。笑声が起る。この間も安重根は続けている。

安重根 (一段大声に)憤激のあまり、この事情を世界に発表しようとするくらいにまで覚悟しておりました。もともとわが韓国は四千年来武の国ではなく、文筆によって立ってきた国です。

子供が出て来て安重根の前に進む。

子供 (手を出して)小父ちゃん! 仁丹ある? ひとふくろ。

安重根 (子供を無視して)この国家的思想を鼓吹するために――。

子供 小父ちゃん! お母ちゃんがね、仁丹おくれって。お銭持って来たよ、これ。

安重根 (子供に)小父ちゃんは薬売りじゃないよ。さ、あっちへおいで――私はこの国家的思想を鼓吹するために煙秋、水青、許発浦、サムワクウ、アジミイなどこの近在の各地を遊説しているものでありますが、国権を回復するまでは、農業にまれ商業にまれ、おのおのその天賦の職業に精励して、いかなる労働も忍んで国家のために尽さなければならない。また場合によっては、戦争もしなければならないのであります。

遠くから声がする。

声 貞露! 貞露!――しようがないねえ。どこ行ったんだろう、洗濯物を持ったまんま。