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あんじゅうこん
安重根
谷 譲次
――十四の場面――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,548 字 · 100 页
安重根もふたたび枕に就き、劉東夏は戸口の椅子で居眠りを続け、しんとなる。長い間。
安重根 (独り言のように、突然)徳淳、君は黄海道のほうはあんまり知らないようだねえ。(間。禹徳淳は答えない)僕のおやじは安泰勲と言って、黄海道海州の生れさ。科挙に及第して進士なんだ。(長い間。次第に述懐的に)そうだ、僕の家に塾があってねえ、あのポグラニチナヤの趙康英や、ハルビンの金成白、それに僕の弟の安定根と安恭根など、みんな一緒に漢文を習ったものさ。童蒙先習、通鑑、それから四書か。はっはっは、勉強したよ。(間)その後僕は、信川で、天主教の坊さんで洪神文と言ったフランス人に就いてフランス語を教わったこともある。僕の家はみんな天主教だが、僕が洗礼を受けたのはたしか十七の春だった。うむ、洪神文というんだ。君は識らないかなあ。
禹徳淳は空寝入りをして鼾をかいている。長い間がつづく。
安重根 おやじの安泰勲が倹約家で、少しばかり不動産があってねえ、鎮南浦に残して来た僕の家族は、それで居食いしているわけだが、それも、今では二三百石のものだろう。故里を出たきり補助するどころではないから、さぞ困っているだろうと思うよ。