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いえのはなし
家の話
柳田 国男
「奉公」奉公会、1918(大正7)年1月~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,799 字 · 23 页
になったのである。それでいわゆる三百諸侯の大多数が、あのように頻繁に国換え断絶、削封を受けなかったならば、一門の間に兵農一致の事実は、分業的に永く存していて、今一段と愉快なる社会組織、すなわち士農工商などという階級がましい差別を作って、一方が威張り一方が卑屈になるというようなことはなかったであろうと思う。
昔の人は今よりもはるかに物堅かったから、家の歴史には非常に注意を払っている。数回の国換えがあってから後でも、元の在所の本家と、音信を絶たぬものが多かった。交通の障碍等のために、一時疎遠になっていても、久しくして尋ねて来て、名乗りあったという話はいくらもある。ただいかんせん、本家の方では浮世の栄枯盛衰が多かった上に、縁故の少ない新領主及びその藩士たちから、冷淡なる待遇を受けるために、身も心もいわゆる土民になり切って、たまたま代換りの老人の絶えた家などでは、そういう武家の親類が、遠くにあることも忘れられてしまうようなことも多かったのである。しかも今日のいわゆる士族なる者の内に、分家も本家もなくて、源平時代から武士であった家というものがあろうはずはないのであるからして、少しくその頃の領主との関係を辿って考えてみたら、たとい本家の所在が不明でも、わが家も元は百姓であった事が容易く想像し得らるるので、もし彼等が