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いえのはなし
家の話
柳田 国男
「奉公」奉公会、1918(大正7)年1月~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,799 字 · 23 页
を調べてみると、ただちにその推測の誤りであることが判る。苗字の中でも伊藤・小林・渡辺・中村というようなあまりに普通的なる少数のものを除いて、その他の大多数はいずれも地名である。官府の文書には維新の際まで、これを在名と称えていた。在名とは所在の地名ということで、すなわち中世以前人が普通居住地の地名をもって、家号としておった習慣が、痕跡となって伝わっていたのである。
しかるに今日の吾々の苗字は、百中の九十九まで、実際の在名ではない。すなわち居住地の地名とは違っている。その中でも京都の華族のごときは、狭い地域の内で家を移していたから、一条・二条・三条等の市街に住まずとも、元の居住地を想像することができる。旧鹿児島藩のごときも、郷に住む武士を政策上互いに置き換えていたけれども、これとても薩隅日の三国の外に出でぬから、島津家の旧臣の苗字は、島津家の旧領の地名であることがよく分る。
ところがその以前の武家になると、移転によって本居の不明になったものが段々ある。前田家の旧臣の姓に注意してみると、加賀に住んだ後、領内のそこここから抱えたかと思わるる多くの苗字に混って、越前の北の庄時代に取り立てられた越前の地名を持つ家があり、さらにごく少数の尾州荒子時代の由緒ある旧家がある。