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いえ
家
島崎 藤村
02 (下)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 141,411 字 · 285 页
留守中、訪ねて来てくれた人達のことを姪から聞取った。
「只今」
と三吉は縁側のところへ出て呼んだ。
「オヤ、小泉さん、お帰りで御座いましたか」
庭を隔てて対い合っている裏の家からは、女教師の答える声が聞えた。
女教師は自分の家の格子戸をガタガタ言わせて出た。井戸の側から、竹の垣を廻って、庭伝いに三吉の居る方へやって来た。中学へ通う位の子息のある年配で、ハッキリハッキリと丁寧に物なぞも言う人である。
「房子さんは奈何でいらっしゃいますか。先日一寸御見舞に伺いました時も、大層御悪いような御様子でしたが――真実に、私は御気の毒で、房子さんの苦しむところを見ていられませんでしたよ」
こう女教師は庭に立って、何処か国訛のある調子で言った。その時三吉は、簡単にお房の病気の経過を話して、到底助かる見込は無いらしいと歎息した。お延も縁側に出て、二人の話に耳を傾けた。
「もし万一のことでも有りそうでしたら、病院から電報を打つ……医者がそう言ってくれるものですから、私もよく頼んで置いて、一寸用達にやって参りました」と三吉は附添した。
「まあ、貴方のところでは、どうしてこんなに御子さん達が……必と御越に成る方角でも悪かったんでしょうッて、大屋さんの祖母さんがそう申しますんですよ。