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いえ

家

島崎 藤村

02 (下)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 141,411 字 · 285 页

青空文庫

行く行くは洋行でもさせたい位の意気込だった……」

「娘の性質にもありますサ」

「俺の娘なら、もうすこし勇気が有りそうなものだ。存外ヤカなもんだ」

と森彦は田舎訛を交えて、自分の子が自分の自由に成らないに、歎息した。

「実さんの家でも越すそうじゃ有りませんか」

「そうだそうな。どうも兄貴にも困りものだよ。一応俺に相談すればあんな真似はさせやしなかった。その為に俺の仕事まで、どれ程迷惑を蒙ったか知れない。ああいう兄貴の弟だ――直ぐそれを他に言われる。実に、油断も間隙もあったもんじゃ無い。どうだ、そのうちに一度兄貴の家へ集まるまいか。どうしても東京に置いちゃ不可……満洲の方にでも追って遣らにゃ不可……今度行ったら、俺がギュウという目に逢わせてくれる」

小泉の家の名誉と、実の一生とを思うのあまり、森彦は高い調子に成って行った。この兄は、充実した身体の置場所に困るという風で、思わず言葉に力を入れた。その飛沫が正太にまで及んで行った。兜町で儲けようなどとは、生意気な、という語気で話した。正太は幼少の頃、この兄の手許へ預けられたことが有るので、どうかすると森彦の方ではまだ子供のように思っていた。