轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふじ

富士

岡本 かの子

「文芸」1940(昭和15)年11月号~1941(昭和16)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,579 字 · 82 页

青空文庫

嫌だなと思うほど、女を撃ち融かす分量のものをもっている。女は生れ付きの女の防禦心から眼をわきへ外らした。しかし身体だけは、ちょっと腰を前横へ押出して僅かなしなを見せた。池のほとりの桔梗の花の莟をまさぐる。

しばらく虚々実々、無言にして、天体の日月星辰を運行る中に、新生の惑星が新しく軌道を探すと同じ叡智が二人の中に駈け廻った。

やがて男は、女の機嫌を取るように、ぎごちなく一礼した。

女も、一礼した。

今度は、男は眼に熱情を籠めて、じーっと見入った。女は下態はそのままで、上態は七分通り水の方へ捩じ向け、ふくふく水溜りの底から浮く、泡の湧玉を眺めている。手は所在なさそうに、摘み取った桔梗の枝の莟で、群る渚の秋花を軽くうっている。

男の心の中に、表現し得ずして表現し度い必死の気持が、歯噛みをした。

事実、男の歯はぱりぱりと鳴った。

男は切なく叫ぶ、

「この大根、嫁かずであれ、――今に」

といい、あとをも見ずに駈け去った。その走り方は、不器用な中に鳥獣のような俊敏さがあった。

女は、きゅっきゅっと上態を屈めて笑った。男が精一杯のやけ力を出して自分をこの蕪野な蔬菜に譬えたのがおかしかった。