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てらだとらひこのついそう

寺田寅彦の追想

中谷 宇吉郎

「寺田寅彦の追想」甲文社、1947(昭和22)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,683 字 · 40 页

青空文庫

この年の日記の最後には「要するに今年は、数年来眠っていた活力が眼をさましたような気がする。いつも元気で気持が明るかった、学校の食堂でもいつも愉快に人と話が出来た、人の悪口などが気にならなくなった、そういう自覚が更にそういう傾向を強めた。……」と、先生自ら書いておられる。まことに千載一遇の好機に、先生との親しい接触を得るという幸運に遭ったわけである。

航空船爆破の実験は、年明けて大正十四年の一月に入って、俄然活況を呈して来た。それは航空船の気嚢の材料たる球皮の見本が、海軍から届けられたからである。湯本君が海軍省へ出かけて行って、T大尉に会って球皮のことを頼んだら、海軍の一部の技術将校たちは、原因が無電ということになると自分たちの失策になるから、何とかして不可抗力にしてしまいたいとしているということであった。T大尉自身も非常に怪しからんことであると憤慨していた。それで球皮はいくらでもやるから、どんどん実験してもらいたいという話であった。湯本君と二人で「そんなことでは海軍の将来も先が見えている」などと、生意気なことを言って、大いに気勢を揚げることにした。