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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:からすうりの花と蛾、火山の名について、日常身辺の物理的諸問題、量的と質的と統計的と、物理学圏外の物理的現象、ロプ・ノールその他、青衣童女像、カメラをさげて、連句雑俎、ラジオ・モンタージュ、青磁のモンタージュ、読書の今昔、映画の世界像、「手首」の問題、映画雑感(Ⅰ)、生ける人形、映画芸術、音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」、俳諧の本質的概論、夏目漱石先生の追憶、田丸先生の追憶。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 页

青空文庫

最後の場面ではこの兵士の行列は前とは直角だけ回転している。すなわち観客を背にして遠い砂漠の果ての地平線に向かって進行する。そうする事によってこのドラマの行く手の運命の茫漠たる事を暗示している。そうして観客の眼前でこの行列とそれに従うヒロインとは熱砂の波のかなたにありありと完全に消えてしまうのである。

この映画に取り扱われた太鼓の主題はたしかにヒロインの愛の対照のライトモチーフとしての役目を立派に果たしていると思われる。こういう点でこの映画は一つのおもしろい試みである。そうして少なくも有声映画に特有な一つの新しい可能性を指摘する点においてかなりの程度まで成効したものと思われる。

音的主題に最も単調な太鼓が選ばれ、そうしてそれがこれほどに成効しているということはわれわれに何事かを暗示する。元来有声映画はもちろん音楽ではない。われわれは聴覚と視覚を同時に働かせる事を要求される。この場合にもしあまりに複雑な、それ自身の存在を強く主張するような音楽を持ち込んだとしたらどうであろう。おそらくわれわれの注意はその音楽のほうに吸収されて視覚のほうが消えてしまうか、あるいはかえって音楽のほうがわれわれの注意の圏外を上すべりにすべり越してしまうことになりはしないか。