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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:からすうりの花と蛾、火山の名について、日常身辺の物理的諸問題、量的と質的と統計的と、物理学圏外の物理的現象、ロプ・ノールその他、青衣童女像、カメラをさげて、連句雑俎、ラジオ・モンタージュ、青磁のモンタージュ、読書の今昔、映画の世界像、「手首」の問題、映画雑感(Ⅰ)、生ける人形、映画芸術、音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」、俳諧の本質的概論、夏目漱石先生の追憶、田丸先生の追憶。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 页

青空文庫

このようにカメラの焦点とその位置および視角の移動によって現在の映画は、事実上、少なくも心理的には立体的実体的な空間を征服しているのである。それでこの上に多大の苦心をしていわゆる立体映画がようやく成功したとしても、その効能はおそらくそう顕著なものではあるまいという気がする。

現在の発明家のねらっている立体映画はいずれもステレオスコピックな効果によるものであるが、誇張されたステレオ効果はかえって非常に非現実的な感じを与えるということは、おもちゃの双眼実体鏡で風景写真をのぞいたり、測遠器で実景を見たりする場合の体験によって知られることである。それでいわゆる立体映画ができると、われわれの二つの目の間隔が急に突拍子もなくひろがったと同様な不自然な異常な効果を生ずることになり、従って映像の真実性が著しく歪曲することになるのではないかと想像される。

ともかくも、現在の映画のスクリーンが物理的に平面だから映画には心理的にも「深さ」がないという考えは根本的の誤謬であって、この誤りを認証した上では立体映画なるもののもたらしうべき可能性の幅員はおのずから見積もり得られるであろうと思う。