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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:からすうりの花と蛾、火山の名について、日常身辺の物理的諸問題、量的と質的と統計的と、物理学圏外の物理的現象、ロプ・ノールその他、青衣童女像、カメラをさげて、連句雑俎、ラジオ・モンタージュ、青磁のモンタージュ、読書の今昔、映画の世界像、「手首」の問題、映画雑感(Ⅰ)、生ける人形、映画芸術、音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」、俳諧の本質的概論、夏目漱石先生の追憶、田丸先生の追憶。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 页
しかしこれははたしてそうであるかどうか、よくよく熟考してみなければならないように私には思われる。第一に客観実在と称するものが物理学体系と独立に存在しうるかどうかが疑問である。また、物理学の系統は実験上の新発見と新概念の構成とによって本質的の進歩を遂げるのであるが、その発見や構成の時間的関係は必ずしも必然的唯一のものが実際に存在したとは考えられない。たとえばハミルトンがもっと長生きをしたとか、アインシュタインが病気したとか、欧州戦争がなかったとか、そんなような事情のために、物理学の体系が現在とはいくらかでもちがった形をとることは可能ではないか、少なくもこういう疑問を起こしてみることは必ずしも無益のわざではないように思われる。
しかしそれほど根本的な問題はしばらくおき、もう少し具体的な問題を取ってみると、各時代において物理学上の第一線の問題とみなされ、世界じゅうの学者が競って総攻撃をするような問題があり、そうしてその問題の対象物は時代から時代へと推移して行く。この推移の経路がはたして単義的なものであるかどうかという問題が提出されうるように思われる。これは少なくもある程度までは偶然的人間的な事情に支配されることは疑いないように思われる。