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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
これが私の平生こうした断片的随筆を書く場合のおもなる動機であり申し訳である。人にものを教えたり強いたりする気ははじめからないつもりである。
集中には科学知識を取り扱ったものも自然にしばしば出て来るかもしれない。しかしそれも決して科学知識の普及などということを目的として書くのではない。ただ自分でほんとうにおもしろいと感じたことの覚え書きか、さもなければ譬喩か説明のために便利な道具として使うための借りものに過ぎない。しかし、そうかと言ってその結果がいくぶんか科学知識普及に役立つことになってもそれはさしつかえはないであろうと思っている。
ついでながら、断片的な通俗科学的読み物は排斥すべきものだというような事を新聞紙上で論じた人が近ごろあったようであるが、あれは少し偏頗な僻論であると私には思われた。どんな瑣末な科学的知識でも、その背後には必ずいろいろな既知の方則が普遍的な背景として控えており、またその上に数限りもない未知の問題の胚芽が必ず含まれているのである。それで一見いわゆるはなはだしく末梢的な知識の煩瑣な解説でも、その書き方とまたそれを読む人の読み方によっては、その末梢的問題を包含する科学の大部門の概観が読者の眼界の地平線上におぼろげにでもわき上がることは可能でありまたしばしば実現する事実である。