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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
そうした芸術的に高等な芝居が、生理的享楽のために泣きに行く観客に評判のわるいのはきわめて当然なことであろうと思う。
原因は少しもわからなくてもさもおかしそうに笑っている人を見れば自分も笑いたくなると同様に、上手な俳優が身も世もあられぬといったような悲しみの涙をしぼって見せれば、元来泣くように準備のととのっている観客の涙腺は猶予なく過剰分泌を開始するのであって、言わば相撲を見ていると知らず知らず握りこぶしを堅くするのとよく似た現象であろうと想像される。その上に少しばかり泣くために有効な心理的な機構が付加されていれば効果はそれだけで充分であって、前後を通じての筋の論理的のつながりなどはたいした問題にはならないのである。こういう見方からすれば、芸術的な高級演劇がさっぱり商売にならないで芸術などは相手にしない演劇会社社長の打つ甘い新派劇などが満員をつづけるのが不思議でなくなるようである。
話は変わるが、日本では昔から「ものの哀れ」ということがいろいろな芸術の指導原理か骨髄かあるいは少なくも薬味ないしビタミンのごときものであると考えられていた。西洋でもラスキンなどは「一抹の悲哀を含まないものに真の美はあり得ない」