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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
日本人の特異な自然観の特異性をある一方面に分化させ、その方向に異常な発達を遂げさせたものは一般民衆の間における俳諧発句の流行であったと思われる。かえってずっと古い昔には民衆的であったかと思われる短歌が中葉から次第に宮廷人の知的遊戯の具となりあるいは僧侶の遁世哲学を諷詠するに格好な詩形を提供していたりしたのが、後に連歌という形式から一転して次第にそうした階級的の束縛を脱しいわゆる俳諧から発句に進化したために著しくその活躍する世界を拡張して詩材の摂取範囲を豊富にした。それと同時にまた古来の詩人によって養われ造り上げられて来た日本固有の自然観を広く一般民衆の間に伝播するという効果を生じたであろうと想像される。俳句を研究してある程度まで理解しているあるフランス人に言わせると日本人は一人残らずみんな詩人であるという。これは単に俳句の詩形が短くてだれでもまねやすいためであり、単にそれだけであると思ってはならない。そういう詩形を可能ならしめる重大な原理がまさに日本人の自然観の特異性の中に存し、その上に立脚しているという根本的な事実を見のがしてはならない。そういう特異な自然観が国民全体の間にしみ渡っているという必須条件が立派に満足されているという事実を忘却してはならないのである。