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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
今はそんな人もないであろうが、しかしよく考えてみると、こうした気分は実を言うとあらゆる芸術批評家の腹の底のどこかにややもすると巣をくいたがる寄生虫のようなものである。そうして、どういうわけか、これは特に映画批評人という人たちのとかくするとかかりやすい病気のように思われる。これは、映画がまだ芸術として若い芸術であるという事が一つ、それから映画の成立にいろいろなテクニカルな要項が付帯しているために、それに関する知識の程度によって批評家の種類と段階の差別が多様になるという事がもう一つの原因になるのではないかという気がするのである。
批評する対象の時間的恒久性という点から見ても実にいろいろな種類の批評がある。たとえば、音楽の演奏会の批評などは、その時に聞かなかった聴衆にはナンセンスである。生け花展覧会の批評などもややこれに類している。映画の批評となると、まさかそれほどでもないかもしれないが、大多数の映画の大衆観客にとっての生命はひと月とはもたない。セルロイドフィルムの保存期間が延長されない限りいくら長くても数十年を越えることはむつかしい。こういう短命なものを批評するのと、彫刻や油絵のような長持ちのするものを批評するのとでは、批評の骨の折れ方もちがうわけである。