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ちいさなくさとたいよう

小さな草と太陽

小川 未明

「赤い鳥」赤い鳥社、1920(大正9)年11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,414 字 · 5 页

青空文庫

「青木の木さん、あなたはどんな花をお咲きなのですか。」と、草は、黙っている青木の木に問いました。しかし、憂鬱な青木は、やはり黙っていました。

こんなに陰気な生活をして、なにがおもしろいのだろうと、草は青木のことを思いました。青木には、みつばちもあぶも、ちょうも訪ねてきませんでした。それにひきかえて、草には、朝から晩まで、ちょうや、あぶや、みつばちが訪ねてきました。

「ほんとうに、あなたはお美しい。」といって、彼らは草をほめたたえていました。

草は昔のことをすっかり忘れてしまって、夢を見るような気持ちでその日を送っていました。やがて、夏も末に近づくと、太陽はふたたび草の上に現れました。

「もう俺は南へ帰る。おまえともこれがお名残だ。」と、太陽は、いつになく悲しそうな顔をしていいました。

けれど草は、そんなに悲しいとも思いませんでした。青木の木より、俺は高いと心の中で誇っていたからです。しかし、太陽が南へ去ってしまうと、まもなく、草は枯れてしまいました。