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しょうもんだいだいもんだい
小問題大問題
佐々木 邦
「現代」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,957 字 · 23 页
津島君の子爵病は長いことだった。一杯やると発作的に催す。遠く王政維新廃藩置県の頃に溯って、
「祖父がその時好機会を逸しなかったら、僕も今頃は子爵の御前様で納まり返っていられるのになあ」
と口惜しがるのを常とした。生れてもいない昔のことを今更何と言っても仕方あるまいに、そこが酒の上だ。酔えば無暗に喧嘩を吹っかける奴さえあるのだから、五十年前の愚痴なら先ず/\好い酒癖の部類に属する。
「又始まったぜ」
と友達も安心して聞いていられる。
「危い/\」
と言ってビール壜を片付ける必要もない。
津島君の子爵病は家庭でも時々起った。それも新婚当時は白面でいて、
「お琴や、考えて見ると気の毒だよ。巧く行っていればお前は子爵令嗣若夫人だったのにね」
と真向から細君に同情を寄せるのだった。そうして厳父逝去後は晩酌の折に触れて、
「お祖父さんがもう少し融通の利く人だったら、お前も子爵夫人になっているのになあ」
と当然襲爵の形で話した。
「あなたが華族さんなら、平民の私なんか迚もお嫁に来ていませんわ」
ともうその頃は若夫人も三十を越していた。
「成程。それも然うだな」
「オホヽ。感心していますのね?」