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こゆびいっぽんのおおじあい

小指一本の大試合

山中 峯太郎

「少年倶楽部」講談社、1931(昭和6)年1月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,932 字 · 13 页

青空文庫

うっかりいった冗談

「どうだ? おれに手向かいするやつは、ヘッ、こんなものだぞ!」

と、いうと、廊下の方へ、ノソリノソリと出ていった。どうしたのか、ぼくにくってかからない。――ハハア、ブルのやつ、ぼくが日本人だから、すこしはこわがってるんかな? と、そう思いながら、ぼくはジョージの倒れてるところへいって、だきおこしてやった。

うっかりいった冗談

ブルは、牛より強いジョージに勝ってから、いよいよらんぼうになった。洗濯代ばかりでなく、倶楽部の代金まで、まるではらわなくなった。この倶楽部というのは、学生の寄宿舎なのだ。名前を「ラサハ倶楽部」という。「ラサハ」というのは、ギリシャのことばで、「友だちの愛」という意味だ。ところが、ブル一人のらんぼうで、みんながビクビクしてる。「友だちの愛」が、ブルのために、やぶれてるのだ。このみんなは、カリフォルニヤ大学の学生で、その大学は、米国の大都会サンフランシスコにある。ぼくは、和歌山中学を卒業してから、このカリフォルニヤ大学へはいって、そして、ラサハ倶楽部に、寄宿してたのだ。日本人はぼくばかり、ほかはみんな、米国人だ。ブルを合わせて四十八人、そのほかに、フランクという倶楽部長がいた。