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こいずみやくものかていせいかつ
小泉八雲の家庭生活
萩原 朔太郎
室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,379 字 · 33 页
なんぼ楽しいの歌でしょう』と言った。あたり一面、稲田の中で蛙が雨のように鳴いていたのである。
松江から東京に移るまで、ヘルン夫妻は、自分の家を持たなかった。ある時は下宿をしたり、ある時は間借りをしたり、ある時は借家をしたりして、常に住居を転々としていた。しかし東京へ移ってから、子供が大ぜい生れたりして、家内が狭くなった上に、貯財も少し出来て来たので、夫人のすすめで売家を一軒買うことにした。ある日二人は、例によって睦じく連れそいながら、牛込辺の売邸を探しに歩いた。すると一軒頃合の家が見つかった。それは昔の旗本が住んでた屋敷で、大きな武家風の門があり、庭には蓮池などがあった。しかし何となく陰気に薄暗くじめじめして、妙に気味の悪い厭な感じがしたので、夫人が直覚的に反対したにもかかわらず、ヘルンは一見して大いに気に入り、『面白いの家』『面白いの家』と、子供のように嬉しがって、是非それを買おうと言った。結局それは、夫人の強硬な反対によって中止されたが、後でそれが有名な化物屋敷と解った時、夫人がほッと胸を撫でおろしたとは反対に、ヘルンは大変失望して、『ですからなぜ、あの家住みませんでしたか。