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こいわいのいっか

小祝の一家

宮本 百合子

「文芸」1934(昭和9)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,193 字 · 31 页

青空文庫

そのとき乙女は、額からとび抜けそうに長い眉をつり上げ、二人とも小柄ながら、乙女よりは三四寸上にある勉の顔を見上げて、

「――わかんない!」

力をこめ首をふって、今云ったように云ったのであった。

勉は忘れていたが、二人がいよいよ結婚するとき、勉は牛や馬を貰うのではないから「のし紙」など親にやるに及ばぬと頑ばり、乙女の母親は、牛や馬でないからこそせめて「のし紙」一枚なりと親から出して貰いたいと泣いた。乙女は、いけないと云うなら、家を逃げ出すまでだと云って、もう東京に出ていた勉のところへ来たのであった。

自分もいやだし、いやに思っているが仕方なく黙っている勉の気持をも察し、気苦労して乙女がとった金は、勉の室をかりると、あと十円お石の借金に入れられただけであった。

勉を引越さすことが出来、乙女がほっとする間もなくお石への借金は倍にかさむことになった。アヤが死んだ。葬式の金がなかった。小祝の一家のために、ほかの誰から融通が利こう。

祖父ちゃんとミツ子を紐でおんぶった祖母ちゃんとが、火葬場からアヤのお骨をひろってかえって来た。

祖母ちゃんは、戸棚の奥へ風呂敷包みをつみかえ、前の方だけあけ、そこへ水色の富士絹の風呂敷をひろげてアヤのお骨壺をのせた。